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相反する二つのものが完全な一つをつくる(2026年4月)

  一見相対しているようなものが二つ揃って、初めて完全な一つとなっているものがあります。左右の足の動きなどもそうです。両足は違った動きをすることで、助け合って一つの動作をつくります。

 左足が進む時、右足は後ろに残ってしっかり大地を踏みしめています。左足の前進と右足の踏み固めという二つの動作は相反するものですが、この二つが一つになって前に進めます。改めて見事なバランス感覚による調和を実感する思いがします。つまり、相反する二つの動きの中で生まれる調和が前進する力を生み出していると言えましょう。

 戦後の歴史を振り返って見ると保守勢力が強い時代もあり、左翼思想に傾き過ぎた運動が盛んな時もありました。どちらも互いを敵と考えやすいものですが、幸いなことに戦後のわが国の政治は、お互いに牽制し合うことによって大筋としては国民の繁栄という信念を守ってこれたように思います。

 相反するものを敵と思わず、自分たちに欠けている部分を補ってくれる大切な味方と思うことができる。そうした寛容と賢明さがあれば、人類はもっともっと繁栄するだろうと思わずにはいられません。

 完全でない人間が論争するのですから、どちらにも必ず誤りもあれば取り上げるべき正論もあるはずです。したがって論争は争うためにするものでなく、自らの足りない部分を知るために行うべきであって、対立は常に自らが飛躍するために役立つものです。そう思えば対立は有り難いものでこそあれ、決して排斥するものではありません。

 自分の考え以外のものはすべて抹殺するという権力の独裁は腐敗を招き、論争のない思考の停滞は改革を遅らせるというのは、これまでの人類の歴史を少しひもといて検証すれば、即座に分かることです。

 競争相手がなければ停滞したり、怠け心が生じて向上しません。だからといって争って傷つき合うほど愚かであってもいけません。完全なる一つを生み出すには、相反する二つのものを調和させる努力が必要なのです。