今月のテーマ
文字サイズ
頂いたものを返す(2025年12月)
赤い花、紫のすみれ、緑の若葉。草木の色は私たちの心を癒してくれます。しかし、元来この世に赤い花も緑の葉もないのだそうです。赤い花は太陽光の七色を受け、その中から赤色だけを反射するために、私たちには赤い花に見えるのだとされています。緑の葉もそうですし、それぞれどんな色を反射するかによって、そのものの色が決まります。地球上のすべての物質は、こうして色づけがされているのです。
太陽の光は無色透明のように見えますが、プリズムを通してみると赤から紫に至る七つの色がいつでも輝いて見えます。光というのはいろいろな色を混ぜ合わせると無色になるという不思議な特性を持っているものなのです。
人間の性質や行動にも色づけという言葉がよく使われます。「私のことを色メガネで見ないでください」という表現も、こうしたことから派生したものだと思います。自然の恵みは平等に人びとの上に与えられています。つまり頂く色は七色ですが、その人が世の中にお返しする時にその人の色がつきます。その色に名や実が与えられるのです。
知識はこれを得ようとする者には分け隔てなく学ぶことができますが、とくに知識を高め世の中に自分の得た学識を分け与える人をわれわれは学者と呼びます。鍛えたカで世の中にアピールする人はスポーツマンであり、歌声を通して人々の心を癒す人は歌手です。人々に愛と慈悲の手を伸べることだけを考え、世の光となっておられる人の中から宗祖や教祖といった方が現れます。
こう考えてみますと、世の中から頂くものだけ頂いて何も返さない人は、無色透明な人ということになってしまいます。
どうすれば儲かるか。何を自分の懐に抱えるか。財産をどうやって膨らますか⋯⋯。そんなことに狂奔する人が多いのが世の中です。しかし、そうしたことに心を砕くことは自分の色を消すことに努力しているのと同じではないでしょうか。自分が何を得るのかを考えるのではなく、何を世の中にお返しできるのか、それを大自然は花の色を通してわれわれに教えています。